エイヤー対タイソン
Stephen P. Schwartzによる、A Brief History of Analytic Philosophy: From Russell to Rawls.(2012)を少しづつ読み進めている。
エイヤー(エア? エアー?)がマイク・タイソンと会った時のエピソードがけっこう面白い。調べてみるとWikipediaにも載っていて、それなりに有名な話らしい。
Schwartzによる最後の一言も含めて面白いと思ったので、日本語に訳してみた。
こんな話がある。エイヤーはある時、ニューヨークのまさに上流階級向けのパーティーで、(幸運にも!)マイク・タイソンと対面した。マイク・タイソンは、後に有名になる若いモデル(ナオミ・キャンベル)にハラスメントをしているところだった。エイヤーがタイソンに対してハラスメントを止めるよう要求すると、このボクサーは言った。「おれが誰だか分かってるのか? ヘビー級の世界チャンピオンだぞ。」エイヤーはこう答えた。「ええ、それで私は前のウィカム論理学教授です。われわれはそれぞれの領域で傑出している。理性的な人間らしく話し合いましょう。」こうしてエイヤーとタイソンは会話を始め、ナオミ・キャンベルは抜け出した。
タイソンだって私の感覚与件から生じた構成物なのだ、という確信がエイヤーに勇気を与えたに違いない。[原注14]
[原注14] 彼女の好戦的な武勇伝を鑑みると、ナオミは自分でタイソンに対処できただろうし、エイヤーの介入を必要としてはいなかっただろうという感じがする。*1
こんな感じで、著者がちょくちょくユーモアを挟んでくる。哲学系の書き手ってたいていこういうとこで滑ってるんですが、Schwartzさんはけっこうセンスがあるんじゃないだろうか。
分析哲学の本で挫折するパターンに「喩えがあまりにもおもんない」「喩えがあまりにも変」で続きを読む気がなくなるというものがあります
— 岸政彦 (@sociologbook) 2020年9月2日
というわけで、引き続き読みます。
A Brief History of Analytic Philosophy: From Russell to Rawls
- 作者:Schwartz, Stephen P.
- 発売日: 2012/05/15
- メディア: ペーパーバック